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平成30年(2018年)4月20日(金) / 日医ニュース

「医師の働き方改革」「新たな専門医の仕組み」などの質問に執行部から回答 代表質問

代表質問1 医師の働き方改革の問題について

 小熊豊代議員(北海道ブロック)からの医師の働き方改革の問題に関して、厚労省や労働基準監督署(以下、労基署)への日医からの積極的な働き掛けを求める質問には、今村副会長が回答した。
 同副会長は、医師の働き方改革については、現在、厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」において、医師独自の制度を別途省令で定めるべく、検討中であることを報告。「安全良質な医療を提供するためにも、医師の健康を産業保健の仕組みで管理することが不可欠である」とし、「その実現のためにも衛生委員会や医療勤務環境改善支援センターの活用をお願いしたい」と述べた。
 また、労基署に関しては、これまでも日医から厚労省を通じて抑制的な対応を要請しているとする一方、労働基準監督官には裁量があり上位下達で指示に従う構図ではなく、特に申告監査(労働者からの依頼に基づく監督)はその傾向が強いとの認識を示し、都道府県医師会に対して、各都道府県労働局と地域の医療を守るための話し合いを進めるよう要請した。

代表質問2 医師の働き方改革と医師不足地域における医療崩壊の危惧

 医師の働き方について、国民に対して医療現場の実情を踏まえた日医による積極的かつ建設的提言を求める小池哲雄代議員(関東甲信越ブロック)からの質問には今村副会長がまず、「国民に対する医療現場への理解」に関しては、会内の「医師の働き方検討委員会」答申でも言及され、本答申を基に日医主導の下、国の検討会に議論のたたき台を発信することを目的とした会議体を設置する予定であることを報告。厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」の「中間的な論点整理」においても、日医が強く求めたことで、「国民の理解の観点」について触れられていると説明した。
 その上で、地域医療を守るためには、医療提供者の努力だけでは解決できないとして、医療を受ける患者・国民に医療の適切な利用について理解してもらうよう、国及び各自治体等による積極的な啓発活動を求めるとともに、「各医療機関においてもさまざまな工夫を行って欲しい」と述べた。

代表質問3 訪日外国人対応医療~いま医師会に求められること~

 訪日外国人対応医療の整備に関する日医の見解を問う島﨑美奈子代議員(東京ブロック)からの質問に対して、横倉会長は、外国人対応医療の課題として、①医療通訳を含めた言葉の問題②診療費③感染症④在留外国人を含めた医療上の問題⑤医療保険―を挙げ、「安心して診療に専念できるよう、国や自治体が主導して一体となって対応しなければならない」と指摘。その解決策として、最新の外国人患者数、医療費やトラブルなどの全国の実態把握を行うとともに、法的整備が必要かどうかの判断材料の収集も必要との考えを示した。
 その上で、日医としては来年度の早い時期に会内に対策会議を設置し、そこでの議論を踏まえて国に要請していく意向を示すとともに、東京オリンピック・パラリンピックなど、国際的な大イベントを想定し、関係省庁を招いた会議・シンポジウムを行ってきたこと、今後は大規模テロ災害研修会を開催予定であることを説明した。

代表質問4 「2025年以降の医療のグランドデザイン」策定について

 竹村惠史代議員(近畿ブロック)は、「2025年以降の医療のグランドデザイン」策定の意向について質問。中川副会長は、「日医の『グランドデザイン』について考えてみると、『日本医師会綱領』に行き着く。その綱領を形あるものにするために、日医はこれまで、かかりつけ医を中心とした地域包括ケアシステムの構築や国民皆保険の堅持等に真摯(しんし)に取り組んできた」とした。その上で、会内の三大会議及び各種委員会の報告書や答申などから、卓見に富んだ示唆も頂いており、また、現在、日医総研でもグランドデザインのデータを整備しているところであると説明。こうした積み重ねを国民にも分かりやすい形で取りまとめ、先生方の協力を得て、国民と一体となって国民皆保険を守っていくと主張した。
 更に、「今後求められるのは、医療を取り巻く環境がどんなに変化しようとも微動だにしない医療を守る組織である」と述べ、日医は、「日本医師会綱領」の下、ブレない主張、かつ柔軟で進化を続ける主張をしていくとして理解と協力を求めた。

代表質問5 新専門医制度は、地域医療に配慮した取り組みとなっているのか

 河野雅行代議員(九州ブロック)からの「新専門医制度は、地域医療に配慮した取り組みとなっているのか」との質問には、松原謙二副会長が、当日配布した研修医に関する最新の資料について冒頭、説明した上で回答した。
 同副会長は、新体制に移行した日本専門医機構(以下、機構)に対して日医が地域医療への配慮等について要望した内容が、機構の新整備指針や運用細則に反映されたものの、実際の運用においては、専攻医の応募の結果等を見ると医師の偏在改善には十分ではなかったと言わざるを得ず、信頼される制度の確立のため、制度運営の方法、制度の個々の仕組みを改めて見直すことが機構には求められているとの認識を示した。
 更に、地域偏在、診療科偏在を改善するための追加の仕組みについても、これらの検証を踏まえ、専門研修において対応可能な方策を早急に検討していくとして理解を求めた。

代表質問6 専攻医応募状況から見えた今後の問題点について

 専攻医応募状況から見えた今後の問題点(①専門医制度と医師数の全国偏在、地域偏在②専門医制度と将来に向けた診療科のバランス)に関する坂本哲也代議員(東北ブロック)の質問には松原副会長が回答。
 ①については、日本専門医機構(以下、機構)が地域偏在の改善を十分に行えていない状況を真撃(しんし)に受け止め、その要因を分析・検討し、次年度に向けて改善を図る意向を示した。一方で、今国会に上程される予定の医師法改正法案において、国や都道府県が、機構に対して地域医療の観点から必要な措置の実施について意見を述べることができる旨が規定される予定であることに触れ、国の関与を抑制するためにも、機構のより適切な運営が求められると指摘した。
 ②については、都道府県ごとの人口動態、年齢構造や、疾病構造の変化等を踏まえた対応が不可欠だとした上で、今後、厚労省から示される予定の医療需要の将来推計等のデータを踏まえ、専門研修のみでなく、医師養成課程を通じた調整方策を検討していくとした。

代表質問7 医師偏在に対する医師法・医療法の一部改正への日医の取り組みについて

 木下成三代議員(中国四国ブロック)からの、①医師偏在、診療科偏在②今回の医療法及び医師法の一部改正における外来機能の偏在・不足対策―についての日医の見解と取り組みを問う質問には、中川副会長が回答した。
 ①については、今回の医療法等の改正は2015年に日医・全国医学部長病院長会議が発表した「医師の地域・診療科偏在解消の緊急提言」を踏まえたものであり、一定の評価をしているとした上で、今後の課題として「医師少数区域」の設定方法を挙げ、「地域の実情を反映するよう、厚労省を通じて強く働き掛けていく」と述べた。
 ②では、患者数など医療需要のデータを基に、あるべき医師配置に自主的に収れんされていくべきであり、開業規制についてはしっかり阻止していくと強調。また、地域包括ケアシステムの構築に向けて、そのリーダーとなる「かかりつけ医の確保」が喫緊の課題であるとして、各地域における若手医師を支えていく仕組みの構築に向けた協力を求めた。

代表質問8 日医は発想の転換を!について

 大中正光代議員(中部ブロック)が、山積する課題における財務省、財界人、経済学者やマスコミの主張にどのように反論していくのかを質問したことに対して、横倉会長は、まず、2014年から行っている「外部講師による役員勉強会」では、日医と考え方が異なる講師も招き、見識を広めるだけでなく、講師にも日医を理解してもらえるように努力していることを紹介した。
 また、自身の会長就任以来、企業の内部留保の活用等、かつては言及しなかった分野でも提案等を行っていると説明。営利企業である薬局についても、医療法人と同様の非営利法人である「薬局法人」の創設を提案していると述べるとともに、終末期医療については、パンフレットや講習会を活用してアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及を進めているとした。
 その上で、「医療の今日的課題に対して医師会が一丸となって立ち向かう時、理念を共有することが重要」と強調し、引き続き「日本医師会綱領」の下、データに基づいた政策提言を行っていく考えを示した。

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