閉じる

平成29年(2017年)12月20日(水) / 日医ニュース

「適切な医療・介護財源の確保」と「医療等に係る消費税問題の抜本的な解決」を求める決議を採択

「適切な医療・介護財源の確保」と「医療等に係る消費税問題の抜本的な解決」を求める決議を採択

「適切な医療・介護財源の確保」と「医療等に係る消費税問題の抜本的な解決」を求める決議を採択

 国民医療を守るための総決起大会(主催:国民医療推進協議会、協力:東京都医師会)が11月22日、都内で開催された。
 大会には、約800名(国会議員107名、代理149名、計256名を含む)の参加者が集い、参加者全員の総意として、「国民が将来にわたり必要な医療・介護を安心して十分に受けられるための適切な財源の確保」「国民と医療機関等に不合理な負担を強いている医療等に係る消費税問題の抜本的な解決」を求める決議が全会一致で採択された。

 当日は、今村定臣日医常任理事の司会で開会。冒頭、国民医療推進協議会長としてあいさつした横倉義武日医会長は、「医療・介護の担い手である医療者や医療機関が、将来にわたり十分に確保されるためには、医業経営の実質的な原資である診療報酬上の厚い手当てが必要である」とした上で、安倍晋三内閣総理大臣が来年の春闘で3%の賃上げを経済界に求めていることに言及。「まずは政府として、医療に携わる300万人以上の賃上げに向けた覚悟を次期診療報酬改定で示すべきである」と述べるとともに、「医療機関等の経営基盤を整え、継続できるものとしていくためにも、医療等に関する消費税問題については、消費税率引き上げ前に、早急に抜本的な解決を図っていかなければならない」と強調した。
 また、横倉会長は、「一度崩壊してしまった地域医療を立て直すことは困難であり、地域医療を担う医療機関が閉院した場合、一番困るのはその地域に住む方々である」と指摘。「地域医療の崩壊は、そのまま地域の崩壊へとつながりかねず、政府の進める地方創生や、一億総活躍の国づくりといった施策と相反する事態を生じさせないためにも、医療を担う我々がこの国の医政を正し、医療に対する国民の信頼に応えていく必要がある」として、参加者の更なる支援と協力を求めた。
 続いて、協力団体である尾﨑治夫東京都医師会長のあいさつの後、来賓として、高村正彦自由民主党副総裁、桝屋敬悟元厚生労働副大臣(公明党社会保障制度調査会長)があいさつを行った。

今村副会長が大会の趣旨を説明

 引き続き、本大会の趣旨を今村聡日医副会長が説明した。
 今村副会長は、現在の消費低迷の主因は将来の社会保障不安であることをこれまで一貫して主張してきたことに触れた上で、「安心して社会保障が受けられる環境となれば、消費も増え、経済が活性化し、税収も増え、結果的に財政再建にもつながる」との考えを改めて説明した。
 更に、わが国では、産業界全体として賃金引き上げの傾向が明らかに見られる中、全就業者の11・9%を占める医療従事者へのベースアップの実施や、賃金の改定が遅れていることを強調。「診療報酬の技術料には、医師、看護師などの医療従事者300万人以上の人件費だけでなく、医業経営の原資をつかさどる設備関係費・ランニングコストや、医療機器・機材費等も含まれていることをきちんと認識して欲しい」と理解を求めた。
 その上で、「景気回復を更に加速させるためには、医療従事者への手当てが必要であり、また、成長戦略としての医療の高度化の部分には新たな財源が必要であることからも、平成30年度の診療報酬改定はプラス改定とすべきである」と主張するとともに、政府が賃金アップを要求している中で、医療に携わる人間だけが景気回復の恩恵から取り残されることなく、医療従事者の過酷な勤務環境を改善するためにも平成30年度予算編成において適切な手当てを確保するよう要望した。
 一方、「医療・介護に係る消費税問題」については、「医療機関・介護サービス事業者の消費税は、診療報酬・介護報酬に相当額を上乗せして補てんされる仕組みになっているが、過去の上乗せ補てんが不十分であったことから、医療界は長年にわたって多額の負担を強いられてきた」と説明。
 この問題を解決するための主な課題として、(1)5%時までの上乗せ補てんが不十分であったことによる「全体の財源の補てん不足」、(2)診療報酬・介護報酬への上乗せの仕組みでは「個々の医療機関の仕入れの違いに対応できないこと」―の2点を挙げ、(1)については、「平成26年4月からの消費税率5%から8%への引き上げ分については、全体的に必要な財源が手当てされたが、平成元年の3%導入時、平成9年の5%への引き上げ時に生じた補てん財源不足については、依然として手つかずであり、日医の推計では、毎年約2600億円を医療界全体で負担し続けている」とした。
 (2)については、「全体として財源が適切であったとしても、対応できないことは中医協を始め、関係者の共通の認識となっている」と説明。「国民の生命と健康を守るため、最善の医療・介護を提供し続けていくことが我々の使命である。社会保障充実のための消費税率引き上げによって、医療機関・介護サービス事業者の経営が脅かされるようでは、本末転倒である」として、「消費税率が10%に引き上げられる平成31年10月までに、関係者が一丸となって議論を尽くし、この問題に決着をつけよう」と述べた。
 続いて、参加団体を代表して、国民医療推進協議会の副会長である堀憲郎日本歯科医師会長、山本信夫日本薬剤師会長、福井トシ子日本看護協会長がそれぞれ決意を表明。その後、猪口雄二全日本病院協会長が、本大会の決議案を朗読し、決議案は満場の拍手をもって採択された。
 最後に、松原謙二日医副会長の掛け声の下、参加者全員が起立して「頑張ろうコール」を行い、会は終了となった。

決 議
 世界に類を見ない少子高齢社会において、国民が生涯にわたり健やかでいきいきと活躍し続ける社会を実現していくためには、持続可能な社会保障制度の確立が不可欠である。
 よって、本大会参加者全員の総意として、次のとおり要望する。
一、国民が将来にわたり必要な医療・介護を安心して十分に受けられるための適切な財源の確保
一、国民と医療機関等に不合理な負担を強いている医療等に係る消費税問題の抜本的な解決
以上、決議する。
平成29年11月22日
国民医療を守るための総決起大会

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる