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平成29年(2017年)9月20日(水) / 日医ニュース

「医学教育の在り方に、学生はどう参画できるか」をテーマに議論

「医学教育の在り方に、学生はどう参画できるか」をテーマに議論

「医学教育の在り方に、学生はどう参画できるか」をテーマに議論

 第5回医学生・日医役員交流会が8月24日、日医会館で開催された。
 日医では、医学生向けの無料情報誌『DOCTOR-ASE(ドクタラーゼ)』を発行するなど、医学生を対象にさまざまな情報の提供を行っているが、本交流会は、その一環として、将来の医療を担う医学生と日医の役員が、日本の医療制度とその問題について共に考える機会を持ち、医師会活動への理解を深めてもらうことを目的として開催しているものである。
 テーマは、「医学教育の在り方に、学生はどう参画できるか」で、今回は有志の医学生3名が運営委員として企画立案から準備を担った。
 今村定臣常任理事の総合司会で開会。冒頭、あいさつに立った横倉義武会長は、日医の活動について、医師年金や医師賠償責任保険によって会員の生活を支えつつ、医療政策や医学教育の在り方について政府と議論しているとし、「日本の医療を国と共につくり上げていくという役割が強い。医師一人ひとりの力ではなかなか動かせないが、組織として意見を集約すると大きな動きが出てくる」と説明。出席した医学生にも、医学教育について忌憚(きたん)ない意見を求めた。
 第1部では、運営委員の3名の医学生が、問題提起として、有識者と医学生に対して行ったヒアリングの結果を報告。
 京都大学医学部6年生の池尻達紀氏は、「新たな専門医の仕組み」について羽鳥裕常任理事への、大阪医科大学6年生の荘司万能氏は、「医学部教育の国際認証」について奈良信雄日本医学教育評価機構理事への、京都大学医学部3年生の外山尚吾氏は、臨床実習に参加した医学生へのヒアリングで得られた結果を、それぞれ紹介した。
 これらの結果を受け、運営委員は論点として、(1)専門医の仕組みに関する議論をはじめ、医学教育・医師養成に関する議論が「外」に共有されにくい理由は何か、(2)医学教育・医師養成の仕組みの設計は、どこまで外部に開かれるべきなのか、(3)卒後教育の在り方を決めるプロセスに、今後当事者となる医学生がどのように参画していけばよいのか-など8項目を提示した。
 その後、今村聡副会長を座長として、羽鳥常任理事と運営委員によるパネルディスカッションが行われたが、同常任理事は、日本専門医機構の議論に医学生がオブザーバーとして参加できるようにするなど、議論を「外」と共有するための方法を検討していることを説明。運営委員からは、医学生にも多様な意見がある中で、誰を医学生の代表とするかという問題提起がなされ、インターネットを用いて多くの医学生が議論に参画できる仕組みなどが提案された。また、CBT(Computer Based Testing)試験の在り方についての疑問が呈され、医学生の重い負担となっていることが強調された。
 第2部では、参加者全員でのディスカッションが行われ、医学部教育の国際認証要件ともなっている学生インタビューやカリキュラム委員会への学生代表の参画について、各大学の状況が紹介されたが、意見に対するフィードバックの実感が得られないとの不満が相次いだ。
 これに対し、オブザーバーとして出席した佐々木昌弘厚生労働省健康局がん・疾病対策課長は、憲法第23条により学問の自由が保障され、大学には自治や教授の自由があることから、本来、医学生は意見の反映を求める権利を有していないことを指摘。その上で、フィードバックを得ていくためには、正当な手続きを踏んだ代表制の仕組みが大切であるとし、卒前・卒後の医学教育の在り方が検討されている今は、意見を述べるチャンスであるとした。
 この他、受け身の受験エリートが多い医学生に対するリーダーシップの養い方や、良医を育てる医学教育の在り方などを巡り、活発な意見交換が展開された。
 今村副会長は総括で、「医学教育の在り方について、引き続き意見を聞きたい。横倉会長が10月に世界医師会長に就任するが、世界的に共通した医学教育の課題についても皆さんの意見を踏まえて議論していきたい」とした上で、「『ドクタラーゼ』を他大学の医学教育の情報共有の場としても、ぜひ活用して欲しい」と述べた。

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