閉じる

平成29年(2017年)2月20日(月) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

災害医療を国家として統合するための提言について

日医定例記者会見 1月25日

 石川広己常任理事は、日医が四病院団体協議会(四病協)と共に、昨年11月30日に「災害医療を国家として統合するための提言」を松本純内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全、防災)に提出したこと、更にその際、松本大臣から、提言内容には厚生労働省関係の事項も相当数あるとの指摘があったことから、12月28日に厚労省医政局長宛てにも提出したことを報告した。
 同常任理事はまず、今回の提言は、日本病院会の中で、有賀徹日医救急災害医療対策委員会委員長(労働者健康安全機構理事長)、山口芳裕同委員会委員(杏林大学医学部救急医学教室主任教授・高度救命救急センター長)が中心となって検討し、昨年9月28日に開催した日医・四病協懇談会にて、日医と四病協との連名での提出が決まったものであると説明。「災害に際し国民を救済することは国家にとって契約の履行であり、義務である。従って、災害医療は、国家的な事業として、必ず結果を得る『責任倫理』の準則の下に展開されなければならない」というのが本提言の趣旨であるとした。
 その上で、災害医療には、外からの支援が到着していない発災直後、DMAT(災害派遣医療チーム)等が活動する超急性期、JMAT(日本医師会災害医療チーム)やAMAT(全日本病院協会災害時医療支援活動班)などの急性期以降、収束期と、いくつもの段階がある中で、クラッシュ・シンドロームや広範囲熱傷だけでなく、さまざまな疾患への対応が必要とされると指摘。更に、これからの時代は、地域包括ケア、医療と介護・福祉の連携も視野に入れつつ、幅広い防災行政の中で、被災者の生命や健康を守る医療の位置づけを高めるとともに、患者の搬送、医療チームの移動手段、医療機関の耐震化と被災した時の早期復旧、情報通信システム開発、災害情報の提供など、災害医療活動を支援していく体制をつくっていくことが求められていると強調した。
 提言では、わが国における災害医療の実態を俯瞰(ふかん)し、(1)行政、日本赤十字社、自衛隊、医師会、病院などさまざまな災害医療チームがつくられている、(2)災害対応をめぐる国家施策に医療の視点が不十分である、(3)災害時の医療に学術的根拠を提供する研究活動は、国際的にみて極めて低調である、(4)最新の情報に基づいたテロの形態が想定されていないため、これに対する準備がない、(5)医療者の院外活動に関する法的、その他の環境が未だ十分に整備されていない―という5つの課題を指摘した。その上で、災害医学に関する知見を集積し、その学術的根拠を背景として災害医療の国家的統合を実現するために、「常設の研究機構の設立」が提言されている。
 石川常任理事は、5つの課題に対して、日医としての取り組みと今後の方向性を説明。特に、(1)では、「都道府県災害医療コーディネート研修の継続実施・充実」等を、(2)では、「全国の医療機関の防災対策のための予算要望」「JMATの枠組みの下で、JRAT(大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会)との連携推進」等を、(3)では、10月の横倉義武会長の世界医師会長就任を契機とした「国際活動における災害対策での連携推進」や「日医総研における研究活動」等を、(4)では、CBRNE〔Chemical(化学)、Biological(生物)、Radiological(放射性物質)、Nuclear(核)、Explosive(爆発物)〕関係の災害研修の後援などの「専門機関と地域の医療機関・医師会との連携の推進」や「2020東京オリンピック・パラリンピックに向けた活動」等をそれぞれ行っていきたいとした。
 最後に同常任理事は、日医救急災害医療対策委員会の今期(平成28・29年度)の諮問事項は、①地域の救急災害医療におけるかかりつけ医の役割~地域包括ケアシステムにおける災害医療を中心に~②JMAT活動の課題と対策~コーディネーター機能を中心に~―であり、今後も検討を続けながら、「被災者健康支援連絡協議会についてもその機能を強化していきたい」と述べた。
 また、記者の質問に答え、同提言については、横倉会長が被災者健康支援連絡協議会代表として委員を務める中央防災会議等にも提出し、その実現を求めていく意向を示した。

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる