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平成28年(2016年)11月5日(土) / 日医ニュース

国民のための生涯保健事業の体系化に向けた共同宣言を公表

国民のための生涯保健事業の体系化に向けた共同宣言を公表

国民のための生涯保健事業の体系化に向けた共同宣言を公表

 横倉義武会長は10月12日、「日本医学健康管理評価協議会」の構成団体の代表者らと共に記者会見を行い、同協議会が取りまとめた国民のための生涯保健事業の体系化に向けた共同宣言(別掲)を公表。体系化に向けた取り組みを推進していくとの考えを示すとともに、国や地方自治体、医療保険者などに対して、理解と支援を求めた。

 「日本医学健康管理評価協議会」は、国民の生涯にわたる健康維持や生活習慣病予防に必要な質の高い保健事業の継続的な提供のため、健(検)診事業における質の評価と向上を図るための対策を推進することを目的として、日医を始めとした健診に関連する10の団体により、平成22年に設立されたものである。
 今回、本協議会が取りまとめ、公表した共同宣言は、わが国において、乳幼児から老年期に至るまで行われている健診結果のデータを一元管理するとともに、国民に対して質の高い保健事業を継続的に提供する「生涯保健事業の体系化」を実現するための第一歩として、健診実施機関が有する健診データ仕様の標準化を目指して、各団体が協力して取り組んでいく考えを示したものとなっている。
 会見の冒頭あいさつした横倉会長は、「日医は、かねてより、国民のライフステージに応じて実施されている健診データ等を、信頼できるID番号を活用し、厳格な個人情報保護を前提として一元的に管理し、国民個々人の健康増進や健康管理に活用することの重要性を訴えてきた」と述べ、今後も、健診関係団体と共に、国民のための生涯保健事業の体系化に向けた取り組みを進めていきたいとした他、これらの取り組みについて、国や地方自治体、医療保険者などに対しても理解と支援を求めていく考えを示した。
 堺常雄日本病院会長は、「行政にはさまざまな健康関連のデータがあるにもかかわらず、国民主体の管理にはなっていないのが非常に残念」とした上で、最近は、保健、医療、在宅介護等の一連の健康管理が重要になっているが、「健診だけでなく在宅介護のデータ管理、共有化がなかなかできていない状況であるので、それも含めて我々が提言していく必要がある。健診関係の業種が集まって共同宣言をするのは意義がある」と述べた。
 西澤寛俊全日本病院協会長は、「健診を行っている事業所ごとにデータ処理が違うことは利用者に迷惑を掛けているのではないか。各事業所のデータが横断的に活用されることは利用者から見ても望ましいことであり、IT化の世の中で、関係団体と協力しながら検討を進めていきたい」とした。
 健診のあり方に関する国の審議会での議論にも参画している今村聡副会長は、「健診データを個人で一元的に管理できる仕組みを既に日医で構築していることは、残念ながらあまり知られていない」と指摘。「今後もさまざまな機会を通じて、その活用を国に対して求めていきたい」と述べた。

日本医学健康管理評価協議会構成団体共同宣言

 わが国においては、乳幼児から老年期に至るまで諸種の健診を中心とした保健事業が展開されているが、それぞれ実施主体や所管官庁・部局等が異なるために、そのデータが一元的に管理されていない。
 このため、国民自身の乳幼児期から、学童期、成年期、壮年期、老年期に至る健康情報が経年的、かつ、十分に活用できていない。
 今後、個人情報の厳格な管理を前提として、国民の生涯を通じた健康情報が一元管理され、一次予防から三次予防までの保健事業が国民のライフサイクルに応じた「生涯保健事業」として的確に実施されなければならない。
 そこで、国民に対して質の高い保健事業を継続的に提供するため、健診に関わるさまざまな課題の解決を図る目的で、健診関係団体により設立された日本医学健康管理評価協議会は、「生涯保健事業」の体系化に向けて、次のことを宣言する。

1.国民の生涯を通じた健康情報の一元管理を目指して、健診実施機関等が有する健診データ仕様の標準化を図ること。

2.医療機関、健診実施機関、健診関係団体等が取り組む国民の生涯を通じた健康増進や健康管理に関わる事業活動に資する、健診のデータベース構築に協力して取り組むこと。

3.健診データにおける仕様の標準化のために策定された「健診標準フォーマット」の普及を目的とした、仕様の更新や改善の検討について協力して取り組むこと。
以上

※「健診」には、健康診査や健康診断と共に検査診断も含んでいる。協議会においては、妊婦健診、乳幼児健診、学校児童生徒健診、労働安全衛生法に基づく定期健診等、特定健診、後期高齢者健診、がん検診、人間ドック健診等を検討の対象としている。

具体的な検討は三つのWGで

 続いて、羽鳥裕常任理事が、共同宣言に至る経緯と健診標準フォーマットの概要について説明。日医が、平成29年度予算の概算要求の中で、健診実施機関のシステム変更に対する費用の補助や健診標準フォーマットの運用への財政支援を要望したことに言及した上で、健診や人間ドックの結果データに関しては、仕様の統一を行う必要があることから、日本医学健康管理評価協議会として、健診データの標準化を目指し、組織・団体間の連携が可能なデータベース構築を目指しているとした。
 また、同常任理事は、健診標準フォーマットについて解説した上で、本協議会が設置したワーキンググループ(WG)では、三つの共同宣言の実現のため、具体的な検討事項を挙げて取り組みを進めていくとし、「共同宣言1」のデータの標準化については、品質保証ガイドラインを定め、「共同宣言3」の健診標準フォーマットの普及に関しては、健診機関に与えられるべきインセンティブについて検討を行っていく考えを示した。
 更に、医療等IDによる情報管理の仕組みと連動することで、住民の健康管理を支援する仕組みの例を紹介し、「国民のための生涯保健事業の体系化の一つとして、ぜひ実現させていきたい」と述べた。

日本医学健康管理評価協議会 構成団体

公益社団法人 日本医師会
公益社団法人 全国労働衛生団体連合会
公益社団法人 全日本病院協会
公益社団法人 日本人間ドック学会
公益財団法人 予防医学事業中央会
公益財団法人 結核予防会
公益財団法人 日本対がん協会
一般社団法人 日本病院会
一般社団法人 日本総合健診医学会
一般社団法人 健康評価施設査定機構

(平成28年10月12日現在)

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