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平成28年(2016年)10月20日(木) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

医療費の在り方について~2015年度概算医療費から~

日医定例記者会見 9月28日

 横倉義武会長は、9月13日に厚生労働省のホームページに公表された2015年度の概算医療費について、現在、日医総研において分析を進めていることを前置きした上で、現時点での分析結果を踏まえ、昨年度の医療費の動向と、医療費のあるべき姿の方向性について、日医の考えを説明した。
 同会長は、「概算医療費」は、確定ベースではない審査支払機関における算定ベースの診療報酬の集計であり、2015年度の確定した国民医療費に関しては来年公表される見込みであるとした上で、分析結果の概要及び所感を以下のように説明した。
 2015年度の医療費は41・5兆円で、対前年度比は3・8%増。この医療費の伸び3・8%のうち、薬剤料(院外処方のみ)の寄与は1・5%と計算され、また、C型肝炎治療薬等抗ウイルス剤の影響は1%程度と推計された。
 これについては、「2016年度の薬価改定で、ソバルディ、ハーボニーは市場拡大再算定の特例を受けて薬価が大幅に引き下げられているため、医療費の2016年度の伸びへの影響は薄まっていくものと思われる」と述べた。
 診療種類別の伸びでは、薬剤料(院外処方のみ)の伸びが11・3%と高く、2015年度には高額なC型肝炎治療薬が薬価収載された影響を受けていると考えられるが、他にも、薬価改定のない年の薬剤料は相当の伸びを示している。
 医療機関の費用構造については、厚労省が過去に推計(推計手法は非公開)した医療機関の費用構造を参考として今回推計分と比較したところ、10年前と比べて人件費が49・1%から47・0%に縮小し、医薬品費が20・9%から21・8%に上昇した他、材料費及びその他の支出(設備関係費、経費)も増加している(図)

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 同会長は、「医療用消耗品等は技術料から包括して償還されていることから、これらの上昇が医療従事者の人件費を圧迫する要因になっている」と指摘した。
 病院・診療所には全国で300万人以上が従事しており、2014年は2002年に比べて1・2倍以上に伸びている。
 これについては、「医療分野は他の産業よりも雇用誘発効果が大きく、特に医療従事者の比率が高い地方においては経済の活性化に多大な貢献をする、すなわち地方創生につながる」と強調した。
 外来医療費の構成比を計算したところ、2001年度に50・6%であった医科技術料は、2015年度には44・2%に縮小。一方、外来医療費に占める薬剤料の割合は36・2%に拡大した。
 調剤技術料については、後発医薬品調剤体制加算の要件が厳しくなっているものの、調剤基本料は上昇傾向が続いている。
 これらの分析結果を踏まえ、横倉会長は、「医療費に占める薬剤料の比率が上昇しつつある一方で、限りある財源の中で人件費の割合が縮小していることが読み取れる」と指摘。経済発展が社会保障の財政基盤を支え、他方で社会保障の発展が生産誘発効果や雇用誘発効果などを通じて日本経済を底支えしてきており、社会保障と経済は相互作用の関係にあると強調した。
 その上で、最後に同会長は、これから年末にかけて厚労省の平成29年度予算の概算要求における事項要求の折衝が始まることから、適切な財源の確保とその配分ができるよう、同省の審議会などを通じて働き掛けていくとともに、「医療等従事者の確保のためにも、"モノからヒトへ"という医療費の配分の在り方を、もう一度考え直すべき」という日医の考え方を主張していくとした。

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