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平成28年(2016年)3月5日(土) / 日医ニュース

「IT時代における地域医療連携のあり方~『医療介護連携』『医療等ID』について~」をメインテーマに

「IT時代における地域医療連携のあり方~『医療介護連携』『医療等ID』について~」をメインテーマに

「IT時代における地域医療連携のあり方~『医療介護連携』『医療等ID』について~」をメインテーマに

 平成27年度日本医師会医療情報システム協議会が2月13、14の両日、444名の参加の下、「IT時代における地域医療連携のあり方~『医療介護連携』『医療等ID』について~」をメインテーマとして日医会館で開催され、熱心な議論が行われた。
 今回は、本協議会開始前に「プレミーティング~見直そうシステムセキュリティ~」が行われ、矢野一博日医総研主任研究員が、外部から攻撃を受けた日医総研HPサーバへの不正侵入の顛末(てんまつ)を、茗原秀幸JAHISセキュリティ委員会委員長が、昨年の日本年金機構の情報漏えい事件のような"標的型サイバー攻撃"などについて、それぞれ説明。渡辺研司内閣重要インフラ専門調査会会長/名古屋工業大学大学院教授は、「全ての情報を守ることは不可能」として、情報を切り分ける"セグメンテーション"の考え方を提案した。
 引き続き、午後3時からは石川広己常任理事の総合司会で協議会が開会。冒頭、あいさつを行った横倉義武会長は、「改正個人情報保護法では『病歴』が『要配慮個人情報』となり、病歴等の情報はいわゆるオプトアウト方式での第三者提供が禁止されることになるが、日医は、患者の同意を得た上でこのような情報を安全に扱うため、電子認証局、医療等IDの創設について積極的に取り組んでいる」とした。
 続いてあいさつした協議会運営委員長の平松恵一広島県医師会長は、「今回の地域医療セッションは、今までと少し視点を変えて、SNSを活用した医療介護連携をテーマとした。フロアから生の声を聞かせて欲しい」と述べた。

各地域における多職種連携の取り組みを紹介

 まず、「I.地域医療セッション」では、富山県の藤岡照裕下新川郡医師会理事が、Microsoft社のGrooveを活用した「あんしん在宅ネットにいかわ」について、本システムにはディスカッション機能があり、職種の垣根を越えた検討・協力が可能になっていると報告。
 窪田理愛媛県医師会常任理事は、県医師会がVPNで構築している「連携EMAネットワーク」について、在宅医療連携BBSの概要とWeb会議システムを中心に紹介した。
 高尾洋之東京慈恵会医科大学准教授は、医療用に特化したSNSアプリ「Join」を中心に、大分県の舛友一洋臼杵市医師会医療福祉統合センター長は、昨年11月現在で8395枚の「石仏カード(フェリカカード)」を発行している「うすき石仏ねっと」について、それぞれ報告した。
 医療情報ネットワークの中の一部として在宅介護連携の仕組みをつくっている「ひろしま医療情報ネットワーク(HMネット)」については、藤川光一同事業統括本部長が「共同在宅診療支援システム(医師協業)」と「在宅医療介護支援システム(多職種連携)」の2つの在宅医療支援ツールについて解説。
 長島公之栃木県医師会常任理事は、インフラもお金もなくICTの専門家もいない医師会でも連携が可能となる完全非公開型医療介護専用SNS「メディカルケアステーション("どこでも連絡帳")」と地域医療連携ネットワーク「とちまるネット」のコラボレーションについて報告した。
 上野智明日医総研主席研究員は、医療・介護分野のICTを利用した多職種連携に関する追加調査の結果を概説。ICTを利用した多職種連携は約70%が「導入効果がある」と回答しているとした。
 引き続き、報告者に川出靖彦岐阜県医師会副会長、佐伯光義愛媛県医師会常任理事、山本隆一東京大学大学院特任准教授、石川常任理事を加えた総勢11名によるパネルディスカッションが行われ、セキュリティ(参加職種・情報の範囲)や運用(実施母体、行政の関与、コスト等)に関して活発な意見交換が行われた。
 14日には、まず、「日医IT戦略セッション」が行われ、「医師資格証」の発行状況と「JAL DOCTOR登録制度」などの身分証としての利用、統合出欠単位管理システム、診療報酬点数算定ができる「電子紹介状等の医療文書」を作成し、電子カルテを導入していない医療機関であってもICTを用いた地域医療連携に参加できる環境を提供する「MI_CAN」の最新情報を紹介。
 その他、日医が政府系ファンドの(株)地域経済活性化支援機構と共同出資し、昨年11月4日付で設立した「日本医師会ORCA管理機構(株)」に関して、これまでの経緯等を説明した。
 昼食時には、初めての試みとしてランチョンセミナーを開催。参加者が自分の携帯を操作しながら、セキュリティ対策について学んだ。

医療分野におけるマイナンバーの利用拡大を危惧─石川常任理事

160305f2.jpg 午後からは、「シンポジウム~マイナンバーと医療等IDについて~」が行われた。
 石川常任理事はマイナンバーと医療等IDの関わりについて、これまでの経緯を報告。個人情報を守るためにも医療等IDは必要であり、医療分野におけるマイナンバーの利用拡大は阻止しなければならないとした。
 向井治紀内閣官房社会保障改革担当室内閣審議官は、マイナンバーに関する多くの疑問に答えるとともに、戸籍とのひも付けや、保険証としての利用など、マイナンバーの今後の利活用に向けた展望を述べた。
 篠原俊博総務省自治行政局住民制度課長は、「個人番号カードに付いているICチップには呼び出しキーのみが入っているので、万が一落としたとしても、それだけで個人情報が漏えいする心配はない」と説明。今後も、公的個人認証を使った新たな電子政府を展開し、民間サービスを広げていくためにも、公的個人認証サービス利用のメリットを増やし、更なる普及に向けて力を入れていきたいとした。
 佐々木裕介厚生労働省大臣官房参事官(情報政策担当)は、医療等分野の情報連携に用いる識別子(ID)について解説。今後については、医療等IDの導入に向けて、保険者、医療関係者とも協議・検討を続けていく意向を示した。
 山本東大特任准教授は、日医に設置された「医療分野等ID導入に関する検討委員会」における議論の内容を報告。引き続き検討を続け、年度内には実現可能な仕組みを提言したいとした。
 閉会式では、次回担当県の蒔本恭長崎県医師会長が次回の協議会に向けた抱負を述べた後、運営委員会委員の牛尾剛士広島県医師会常任理事が2日間の協議会を総括し、閉会となった。
 なお、本協議会では、「医師資格証」を使った出欠管理を行い、119名の利用があった。

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