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平成28年(2016年)1月5日(火) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

医療における適切な財源確保を~社会保障の充実によるローカル・アベノミクスの推進~

 横倉義武会長は平成28年度予算編成の大詰めを迎え、医療における適切な財源確保に向けての所感を述べた。
 冒頭、同会長は、財務省が社会保障費の伸びを5000億円弱にすると主張していることに対し、「骨太の方針2015」の中の「これまで3年間の社会保障関係費の伸び(1・5兆円程度)の基調を継続していく」ことは、決定過程の議論を重視し、あくまでも「目安」であるべきであり、「各年度の歳出については、一律ではなく柔軟に対応する」と書かれていることから、高齢化等に伴う増加額を単純に3で割って年間5000億円とすれば良いものではないと指摘。現在、ジェネリック医薬品の使用促進などによる医療費の適正化や、地域の実情を踏まえた改革、更には今年発足した日本健康会議での取り組みも進んでおり、数年後には医療費の伸びの抑制効果も期待できるとした。
 その上で、制度改正がない中で単純に年間5000億円というキャップをはめるべきではなく、関係者の議論を踏まえつつ、必要な時には制度改正を行いながら削減していくべきであり、あくまでも3年間で1兆5000億円という視点で見るべきだとした。

非常に厳しい医療機関の経営状況

 また、昨年11月に公表された「医療経済実態調査」によると、医療機関は非常に厳しい経営環境に置かれており、(1)費用構造における人件費の割合は、2000年の50・2%から2012年の46・4%へ、12年間で約1割減少している(2)技術料と医薬品からなっている診療報酬のうち、技術料には医師、看護師等医療従事者の人件費だけではなく、医業経営の原資を司る設備関係費・ランニングコストや医療機器・機材費等も含まれている(3)医薬品費には制度発足時に十分な技術評価ができなかった不足分に相当する潜在的な技術料も含まれている─ことを説明。(1)の人件費の割合の減少の原因としては、技術料に包括して償還されている医療用消耗品等の価格が上昇したことにより、結果として人件費が圧迫されていることを挙げた。
 その上で、現在、医療機関の従事者は全国で300万人以上に上り、リーマンショック後の月間現金給与総額を見ると、製造業では109・3%と約1割も上昇、それに対し医療では98%と減少しており、景気回復を後押しできない状況だとした。

医療分野は経済の活性化に貢献

 更に、「医療分野は他の産業より雇用誘発効果が大きく、特に医療従事者の比率が高い地方では、経済の活性化に多大な貢献をする」として、「医療分野への財源投入は、地方の経済を活性化させ、"ローカル・アベノミクスの推進"が期待できる」と述べ、医療関係機関の従事者約300万人の給与を2015年の春季労使交渉妥結結果並みに2・52%引き上げるには、国庫負担ベースで約1200億円が必要だとした。
 また、同会長は、国民に適切な医療を提供するには過不足のない診療報酬の確保が重要になるとして、高齢化のみならず、物価・賃金の動向や医療の高度化を反映し、地域医療を確保するためには、平成28年度診療報酬改定はプラス改定とするべきと主張。そのためには、「薬価等引き下げ分は本体改定財源にきちんと充当して活用すべき」との考えを示した。
 最後に同会長は、平成28年度診療報酬改定に当たり、3年間で1・5兆円の目安については柔軟に対応し、必要な財源を確保するよう求めていくとし、「医療を取り巻く環境が非常に厳しい状況に置かれている中で、今回、診療報酬のマイナス改定を行うことになれば、医療崩壊の再来を招くことになる。政府は必要財源を確保し、診療報酬をプラス改定とすることを強く望む」と結んだ。

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