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平成27年(2015年)11月20日(金) / 日医ニュース

「地域医師会を中心とした勤務医の参画と活躍の場の整備」をテーマに

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「地域医師会を中心とした勤務医の参画と活躍の場の整備」をテーマに

「地域医師会を中心とした勤務医の参画と活躍の場の整備」をテーマに

 泉(司会) 「医師会の組織化」についてご発言ください。
 佐々木 私は、医学部の学生のうちから保険診療について講義をしてもらい、臨床研修医の時に医師会の活動を組み込むような形をとっていくと、医師会の入会率はもう少し上がると思います。
 勤務医は全員が大学に残れるわけではなく、医師会の活動をあらかじめ認識しておくというのは、非常に大事なことだと思います。
 川村 稚内は、医師会の会員であるかないかにかかわらず、事実上、医師の職能集団である医師会に協力しないと動けなくなってしまうものですから、例えば全員医師会に入ってくれと言われた時に、恐らくみんな入るのだと思います。
 一方、大学にいれば研究者としての生活も、あるいは何か問題があった時の相談事も全て引き受けてくれます。
 また、病院などでも規模の大きい所になると、病院が全て引き受けてくれるため、医師会に帰属しているという意識は、若い先生方はずっと持たないできたし、持たなくてもずっと暮らしていけます。
 しかし、勤務医に係るさまざまな問題や女性医師の待遇の問題、あるいは長時間労働の改善の問題等も含めて、医療界全体を調整するような形で提言していける組織は、医師会しかないと思います。そのことがもう少し具体的に皆に見えるような形になるといいと思います。
  特に若いドクターが、どういう組織に帰属意識を持っているかというところだと思うのですが、通常は医局であるとか、大きな病院に所属していればその病院になりますので、第3の軸として医師会がそういう存在たり得るかということだと思います。
 例えば医師会に所属している自分に何がインパクトがあるかということを考えた時に、現状だと具体的に見えてくるものがあまりないというのが、医師会に興味が向かない大きな要因だと思うのです。ただ、東京都医師会の委員会でキャリア支援の答申づくりに関わっていた中で、医師会が何か若手の医師にアピールするところがあるとしたら、大雑把にはキャリア支援ですし、例えば勤務医サポートとかそういうところになってくるのではないかと思います。
 幸原 医師会が国政で頑張っていることはよく理解しています。でも、勤務医が参画して一票を投じているという感覚はなく、ほとんど無関心なのです。
 結局、勤務医に参加しているという実感を持たせるには、ある程度医師会に勤務医が入らないといけないと思います。勤務医の入会が進めば、関心のある人がどんどん参画してくるので、加速度的に医師会の力が増してくると思います。
 川村 結局、厚生労働省が話を聞く先は日医です。
 政治的な活動であったり、陳情行動であったり、さまざまな活動を通じてさまざまな政策が決定されている背後に日医があるということを、患者さんにも、若手医師にも、もっと知らせていく必要があると思います。
 患者さんだけでなく、医師の中においても、若い先生も含めて「医師会はこういうことをやりました」ということが、十分に伝わっていないと思います。
  たぶん若手医師に関心があるのは、「自分に対してどうか」ということだと思います。医師会の働き掛けで政策的にどう変わったとか、そういうことに対して医師会の力は非常にあると思います。ただ、若い医師に医師会に興味を持ってもらうためには、医師会は自分にどういう影響を及ぼしているのか、自分とどう関わるのか、個人レベルにどう還元されるのかということがはっきりしないといけないと思います。
 例えば、病院で働いている若い研修医が医師会と日々の業務の中で何か関わっているかというと、今の私達が知っている範囲の医師会活動の中ではあまり具体的なものがないと思います。ですから、病院にいる若い勤務医に医師会へ関わってもらうようにするためには、具体的なアクションとしてはっきりしたものを示すということが必要だと思います。
  「勤務医の長時間労働の改善策」についてご発言下さい。
 川村 当院は、研修医が当直しますと翌日は厳密に半休になっています。ですので、そういう長時間労働ができないようなルールになっているのです。ただ、それを確実に行うことは人手不足のために困難です。
 佐々木 私は副院長という立場なので、長時間勤務若しくは月40時間以上の超過勤務があった場合は全員チェックします。それが2カ月続いた場合は、病院長がその上司を呼び出して「年6回までしか月40時間超えてはだめだ」と注意を促します。それから、研修医だけではなくて、当直明けの医師は半日で帰さないといけません。タイムカードを押していない場合も、医長を呼び出して注意します。
 幸原 以前、過重労働をしている医師の意見を聞いた上で、医師会が病院との仲を取り持ち、直接病院長と交渉してもらう場を設けたことがあります。そして、その医師の勤務制限という形で、9時から5時までの勤務時間という契約をしてもらいました。医師会は、そういうようなこともできるということです。
 また、地域の患者さんを全て診るには、患者循環を活性化しなければなりません。そのためには、地域への強力な患者情報提供体制を構築する必要があります。これを動かすには、長期的に取り組む必要があります。
  私の病院では、研修医は当直明けに休むことは浸透していますが、三六協定の内容などは若いドクターは特に分かっていません。
 ですから、超過勤務は何時間までできるなどということはたぶん関係なく、患者さんの病状に応じて夜までいたり、夜中に来た患者さんを診てということになるので、三六協定等の制限下であっても、超過勤務の時間が非常に長くなってしまうことはあります。ただ、当院の場合は一定の時間を超えた勤務があった場合には、産業医の面談をするような仕組みにはなっています。
 レジデントも同様です。しかし、彼らの中にはむしろ「超過勤務の手当てがつくからいい」という感覚の人もいますので、なかなか難しいところです。
 齊藤 乳腺外科であっても、形成外科との共同で深夜に及ぶ移植の手術もあり得ます。途中で手を離されると指導や診療ができないこともあります。超過勤務に対する意識はあり、ジレンマが生じます。そうした意識の中で、若い人達はなるべく帰したいので、自分が変わるというようなことがあります。
 特に、我々の診療科は女性の比率がどんどん高くなって、医局員10人程の中で同時に2人ずつぐらいが妊娠期にあります。そうすると、シングルの女性と男性と私という体制で、何とかそこを切り抜けなければいけない。目の前に患者さんをおいて「5時だから帰ります」というようなことはできないことですので、診療以外にも教育活動だ、研究活動だ、事務仕事だと、膨大な量の仕事に追われることとなります。
 ですから、そうした現状に対応すべく仕組みをどんどん変えていっています。ただ、そこにはタイムラグが生じますので、すぐには改善できず、過重労働が解消されないことになります。
 佐々木 長時間労働を改善するには、患者さんを減らすしかないと思います。
 しかし、入院患者を減らすのは経営に直結しますので、入院患者は確保しつつ外来を縮小するしかありません。そして、外来を縮小するためには、地域連携をどんどん推し進めるしかないのです。
 ですから、勤務医の勤務時間を減らすためには、地域連携を一生懸命にやることしかないと思います。
 笠井 本日は貴重なご意見をお聞かせ頂き、ありがとうございました。
  ありがとうございました。

勤務医座談会出席者
泉  良平【司会】(日医勤務医委員会委員長・富山県医師会副会長)
川村 光弘(市立稚内病院副院長)
幸原 晴彦(大阪南医療センター第三内科医長)
齊藤 光江(順天堂大学医学部乳腺・内分泌外科教授)
佐々木春明(昭和大学藤が丘病院副院長)
鄭  東孝(東京医療センター総合内科医長)
笠井 英夫(日医常任理事)
(敬称略)

※外字は代替文字で標記しております。

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