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平成27年(2015年)11月20日(金) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

医療経済実態調査報告速報値公表を受けて

定例記者会見

定例記者会見

 横倉義武会長は、11月4日の中医協総会において「第20回医療経済実態調査」の結果が公表されたことを受け、「詳細な分析結果は、後日、中医協に提出し、その際に日医の見解を発表する」とした上で、結果の概要について述べた。
 同会長は、一般病院の損益率が2013年度はマイナス1・7%であったのに対し、2014年度にはマイナス3・1%となり、赤字幅が1・4ポイント拡大していることや、一般診療所全体で医業収益が0・2%減少し、損益差額率もそれぞれ減少していることなどを挙げ、病院、診療所のいずれも厳しい結果であることが示されたとした。
 また、病院では勤務医の給与が減少し、診療所では院長給与を引き下げたという結果になっていることを説明。
 一部報道で、「診療所の利益安定」との見出しもあったが、「診療所は損益差額が減少し、院長給与を引き下げていることは重く見るべき」と述べるとともに、「医師確保が困難な地域等では、医師の給与を引き上げざるを得ないケースもあることに注意が必要だ」と指摘した。

マイナス改定は地域医療の崩壊をもたらす
 財政制度等審議会(10月30日開催)が、「診療報酬本体のマイナス改定」を主張したことにも触れ、「今回の調査の結果を鑑みれば、更なるマイナス改定は地域医療の崩壊をもたらす」との危機感を示した。
 更に、民間企業では利益率が上昇している一方で、民間病院の利益率は低下していることや、病院、診療所では、幅広い職種で職員数が増加しており、医療機関には全国で300万人以上が従事しているが、医療・福祉業の給与は全産業よりも低くなっていることを指摘。
 医療従事者への手当てをすることは、特に医療従事者の比率が高くなる地方では、経済の活性化により経済成長を促し、地方創生への多大な貢献につながるとした。
 また、同日の財政審の資料において賃金の動向を2004年を基準として指数化していることにも言及。リーマン・ショック後の2009年を基準とすると、医療・福祉業は低水準となり、財政審の資料は「マイナス改定」を導くために恣意(しい)的に作成されたものと言わざるを得ず、遺憾だとした。
 最後に同会長は、「診療報酬は、国民皆保険体制の中で、実質的に医業経営の原資を司るものであり、医業の再生産の可能性を左右し、ひいては医療提供体制の存続に直結するものである。医療機関は、得られた利益の中から借入金の返済や設備投資を行いながら経営を維持し、地域医療に対する責任を負っている」とした上で、「今後は医療経済実態調査の結果を基に、中医協で診療報酬改定の議論が行われるが、診療報酬は決して医師の給与のためのものではない。プラス改定を行わなければ、地域医療崩壊の再来を招くことになる」と強調。
 「医療は公共財である。日医は、それぞれの地域で医療機関が機能を発揮し、安定した経営を行い、過不足のない診療を行うことによって、地域住民の健康を守ることができるよう、発言していきたい」と結んだ。

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