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平成27年(2015年)10月20日(火) / 日医ニュース

「地域医師会を中心とした勤務医の参画と活躍の場の整備」をテーマに

勤務医のページ

n271020m1.jpg 泉(司会) 「院内での連携」についてご発言下さい。
川村 病院の中では、例えば自分の科ではないと思った時に、院内での患者さんのやりとりは比較的やりやすくできていますので、関係のある科に電話1本掛けてお願いして診てもらうというような流れで、何とかつないでいます。

n271020m2.jpg  院内連携は常時行っており、他科依頼というような仕組みもあります。また、各診療科で予約の枠もあるので、システムとしてできないということはありません。
齊藤 医師に求められるものは二つあると思います。一つは、総合的に診てトリアージをするようなこと。もう一つは、専門性を高めて、先端の治療まで含めた治療の提示ができることです。
 その二つの機能を、少人数の所では1人でやらなければいけないし、大規模の病院では分業して、機能的に回せる仕組みが必要だと思います。
 例えば、私の場合、乳房に関わる悩みは、そこから派生したことも含めてセンターで管理しますが、「それ以外かな」と思った時にお願いするのは総合診療科です。
 センター内で孤軍奮闘するより、機能的に早く診断ができるということで、理想にはまだ到達していませんが、大きな病院ならではの機能的に診断から治療につなげるという仕組みをつくろうとしています。

n271020m3.jpg 佐々木 私の病院の内科はもともと七つの臓器別で出発したのですが、全体を診ようということで、昔は誰かが必ず夜残っていて相談できる、いつでも相談できる体制があって、その風潮がずっと残っています。
 ですから、地域連携の話もそうですが、院内でもドクター同士が、時間のない中でもきちんと話をしていくということは、患者さんにとってはいいことだと思います。
 1990年頃、総合診療は弱小の診療科でした。大きくなってきたのは2000年代ぐらいになってからでしょうか。それは高齢化とパラレルで、患者さん層は単一の診療科で完結しないような人達がとても増えてきて、総合内科に頼みやすいというようなことが起きてきたというのが背景にあるのかも知れません。
 当然、臓器別の診療科が診たほうが、明らかに患者さんのアウトカムがいいというような病状の時には、我々は患者さんを抱えるつもりは全然ないので、専門の診療科にお願いをしているのですが、往々にして戻ってくることが多いです。

n271020m4.jpg 幸原 例えば患者さんが一斉に受診されても、1人の医師が診断しないといけない。その時いかに情報があるべきか。
 私のように内分泌代謝の専門であれば、患者さんや他科の医師が見ても分かるよう、自分が考える病態を簡潔にまとめておく必要があります。
 そのため、生活習慣病の中で最も治療が組織化されている糖尿病診断を効率化する目的で、「糖尿病ナビゲーション」という、全ての情報をコンピューターの一画面に集中させる、ICTを利用したシステムをつくりました。1枚だけで診療が最後まで完了するもので、診察ごとに患者さんの背景や既往歴なども少しずつ書き込んで必要な情報を蓄積します。
 情報入力は、コメディカルなども含め多職種で行います。システム上でデータ加工し、患者さんへはサマリーや電子作文として印刷するのです。
 我々が一生懸命作成したデータ表を、クリティカルパスとして渡しても、専門外の医療関係者や患者さんにとっては数字の羅列に過ぎません。十分な説明文が必要です。
 当院には登録医制度というものがあり、登録医の名から地域医療連携室に申請して、電子カルテにWebからアクセスできるという仕組みがあります。ですから、紹介された先生がもし登録医であれば、その患者さんの公開申請をしてもらって、認められれば自宅のインターネットから当院の電子カルテをそのまま見られます。
 ただし、情報のやりとりは手段であって、最終的な目的はテキスト以上のものが伝わることにありますので、顔の見える部分で地域の人達と連携することが必要になると思います。
 「勤務医が地域医師会に参画して活躍するために」についてご発言下さい。
佐々木 地域連携と言うと基幹病院が上にあって、診療所などが下にあるという、ピラミッド型のようなイメージを持ちますけれども、それが問題だと思います。基幹病院も診療所も中小病院も全体で1人の患者をどうやって診るかという話にしていかないと、地域連携はうまくいかないと思っています。
 医師会に入る前から、地域の診療所の先生達とは顔の見える連携の中で情報のやりとりなどはやっていますので、医師会に入る前と後で意識が変わったということは、正直あまりありません。
 病院としても、3、4年前から医師会と連携して勉強会を行っていますので、意識もだいぶ変わってきています。

n271020m5.jpg 川村 稚内に来る医師は、ほとんど私どもの病院に勤めますので、メンバーが変わるごとに、医師会主催と病院主催で、二度顔合わせをするようにしています。
 医師会との連携が必要だと一番強く感じたのは、東日本大震災の後、薬剤の極端な不足が生じた時期です。地域医師会と連携して、薬剤師会も交えて、地域での不足を生じないような形で取り組みました。
 あることを実現したいと思った時に自分の病院だけでは一部しか叶いません。しかし、医療の大きな流れが変わる時点で、地域の医師会と連携すると全体が同じように動くので、地域や行政の混乱も少なくて済むというようなこともあります。
幸原 医師会と病院が求めるもののニーズが一致すると、物事は大きく動きます。この点で、医師会は大きなパワーを秘めています。
 私は、患者さんを紹介し合いながら地域医療連携を育ててきたことに、大学では味わえないようなダイナミックな社会システムを動かせた実感を持ちました。そういうことに喜びを感じられる勤務医を発掘して、活動の場をある程度提供することが医師会には重要です。
 また、私は勤務医ですが地区医師会の理事として活動しています。病院から見た医師会、医師会から見た病院のさまざまな問題が分かります。そうした問題に対して、共通の最大公約数は何かを見つけようと努力し、患者さんの情報がひと目で分かるサマリーシートに行き着いたわけです。

n271020m6.jpg 齊藤 東日本大震災の際に私は被災地であるいわき市に向かったのですが、平時の医療と有事の医療、医師会を本部として、8の字を描くように交点をそこに置いて、見事にうまく機能させていました。医師会にはこういう活動をきちんとマネージする力があるのだと思いました。
 もう一つの例としては、医療連携の会を我々大学が、東京23区の医師会と季節ごとに1回開いています。その懇親会では、医師会別に相当活動が違うのだということを目の当たりにしています。
 その他、我々の科と医師会との共同作業としては、「地域連携を共に考える会」や、ジェネラリストとスペシャリストの知識レベルを均てん化させるための情報交換会なども行っています。
 東京都の世田谷区医師会は独自の学会を毎年開催していますが、そういう所に各部門が演題を出したり、医師会が行っている学術活動に参加したりしています。
 また、同医師会と当院の若手医師との懇談会には、院長も参加するので、多数出席するようになりました。
 当院の取り組みの一例として、地域連携の会を開催しています。近隣の医師会長や所属の開業医の先生方と、実際に病診連携などについて話したり、「顔の見える」コミュニケーションの場として機能していると思っています。

勤務医座談会出席者
泉  良平【司会】(日医勤務医委員会委員長・富山県医師会副会長)
川村 光弘(市立稚内病院副院長)
幸原 晴彦(大阪南医療センター第三内科医長)
齊藤 光江(順天堂大学医学部乳腺・内分泌外科教授)
佐々木春明(昭和大学藤が丘病院副院長)
鄭  東孝(東京医療センター総合内科医長)
笠井 英夫(日医常任理事)
(敬称略)

※外字は代替文字で標記しております。

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